ANBOUNDジャパンセレクション(2025年6月)
ANBOUNDジャパン

6月、中国と米国の貿易協議は動き始め、中国政策当局は国内消費や開発プロジェクトを梃入れした。中国国内の不動産市況や国内消費の弱さは懸念されたものの、上海株式市場は6月25日終値で4月以降の最高値をつけた。わずかに人民元高ながら交易条件は大きく変わらず、中国国内の輸出勢はひとまず安心した。中国政策当局は都市再生と超長期特例債発行増を同時に進めた中にあって、人民元金利カーブは安定した。
6月下旬、中国人民銀行を中心に政策当局は連携し、国内消費にフォーカスした追加的な金融措置を公表し、消費サービスに絡む内需の梃入れを強化した。人民元相場のゆるやかな動きは輸出勢にとって米関税ショック波及のクッションになり、金融緩和の政策効果と相俟って上海株式市場は安定した。米関税措置に反応して5月レアアースの輸出は減少し、グローバルな生産と資源サプライチェーンは依然としてストレスに晒されている。外国資本は対米関税交渉の不透明感から、投資申請額は伸びた一方、投資実行額は芳しくなく、様子見が続いているのが実情である。
ここ最近、イランを中心に中東情勢に耳目が集まったが、今後、対米国の関税協議の帰趨に国際金融市場の耳目が再び集まる場面があるに違いない。7月以降、米トランプ政権や市場関係者の思惑が人民元や上海株式市場のストレス要因になりえる。7月、対米関税協議の最終的な着地について市場観測が交錯するはずである。先行き、①国内余剰資金がリスク要因の再燃に際してクッションになるか、②今の人民元相場下の輸出と外国資本の投資実行フロー、③都市再生 ·開発プロジェクトの進捗、不動産市況の変化と絡めて情勢分析すると良いであろう。
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