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Thursday, April 06, 2023
「精密農業」は中国農業の未来の可能性になる
陳功

日本は一大工業国だが、農業生産は縮小トレンドにあるかもしれない。しかし、日本農業はすでに変化?再生が本格化して成功している。

例えば、台湾の高級スーパーでは、日本産メロンは6,000台湾ドル(2万6千円、196米ドル、1,372元)で販売されていた。8,000台湾ドル(3万5千円、1,827元)の日本産スイカもあり、高級フルーツの多くは日本産であった。

なぜ、世界の高級フルーツは工業大国である日本から生まれるのだろうか? これは「精密農業」の賜物であろう。収量を求めずに品質を追求して農産物の高品質?高価格を確保するのが「精密農業」である。これは中国の第一次産業政策になる。収量と品質はひとくくりにできず、まったく異なる方向性?発展経路が求められ、生産方法?文化?生産者の魂の違いが存在する。

私は何年も前に「精密製造」を提唱した。「精密製造」を通じて中国の製造業は様々な発展問題、主に不動産コスト高、人材不足を解決できるとした。 しかし、その後、「立派なものづくり」概念は経済学教授?官僚により「職人技」とされて何も進展しなかった。 今、私は「精密農業」を提唱している。

「精密農業」は「精密製造」のような「職人技」概念ではなく、多くの産業の課題を克服する概念と考えられる。

例えば、北海道夕張市では、メロン1箱500万円で落札された。 1箱当たりメロン2個でメロン1個の平均価格は空前の高値であった。夕張メロンは日本で最も高価な果物のひとつである。

夕張は北海道中央部に位置し、かつて重要な炭鉱地帯として1880年頃から石炭生産が始まった。日本全国から労働者が集まり、石炭都市が形成された。 しかし、石炭採掘で財を成したものの、地元の農業生産は貧しく、まともな農業は殆どなかった。土壌に火山灰が含まれ、適作な作物はなく、鉱業に多くの土地を収用され、地元農業は生き残れなかった。

地元の農業組合は農民の生活様式を守るため、地元に適した果物?野菜種を試みた。 模索は長く続いて1950年、多くの地元農家にメロン栽培の習慣があると発見された。メロンはマスクメロンであった。当時、在来メロンは甘くなくて果肉もオレンジ色をしていたため、市場に受け入れられなかった。地元農家は市場で売れず、自家消費した。 ところが、夕張メロンには独特の香りがあり、甘くすれば特産品になると研究者は考えた。

そこで1959年以降、夕張農家は地元農協の協力の下、メロン品種改良に取り組み始めた。品種改良を進め、17農家からなるメロン協会を設立し、全国の苗木市場を回って夕張の畑に合う品種を探して問題は解決された。

夕張市農協では、東京に輸送?販売を考え、最初はコスト?時間からトラック輸送したが、東京は気温が高く、メロンの甘さや香りは変質してしまった。 そこで電車輸送と氷を使った鮮度維持を試みたが、輸送中に氷が溶けて水に浸かったメロンは販売不能であった。結局、空輸の選択肢が残り、陸送の数倍もコストがかかった。夕張農家にはメロンが市場に届くまで高いコストを払うのは大いなる試練であった。結局、夕張農家は東京に夕張メロンを届けるために空輸に踏み切った。当初、この試みは奏功せず、東京では夕張メロンは「カボチャ」と呼ばれた。しかし、夕張農家は品質管理を徹底した。夕張農協は夕張メロンを知らせるため、大手百貨店コラボなど様々なマーケティングを試みた。1980年、夕張メロンは北海道夕張を代表する名産品となった。夕張炭鉱は衰退して地方財政が苦境に陥る、夕張メロンは救世主になった。

夕張のケースから、精密農業は質の高い生産活動のほか、地域組織のマーケティングと戦略が重要とわかる。日本の精密農業の決意?強さが大切であった。第二次大戦後、日本の果物生産は飛躍的に増えた。精密農業は厳格な等級制度を備えて組織化される必要がある。精密農業は等級ごとに異なる価格を曖昧にせずに設定する必要がある。例えば、夕張メロンは1個1万円から4千円まで4等級に分類され、地元農協は厳格管理している。農協は商品供給をコントロールし、価格安定を図っている。贈答品や高級品の開発が必要である。

もちろん、「精密農業」の発展は容易でない。しかし、中国は生産コスト上昇、深刻な高齢化、消費力の弱さなど日本と共通の条件がある。中国は資本と知識労働者をひきつける「精密農業」を選ぶのは合理的であろう。中国政策当局は「精密農業」を第一次産業計画に盛り込むべきであろう。

結論

高齢化が進む中国にとって農業の拡大?強化の道を探る必要がある。「精密製造」とともに「精密農業」は中国の農業発展の今後の方向性になり、中国農業の質の高い発展につながる。

以上

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